2.


――あの日も、こんな青空だった……
静かに息を吐いて、スピアはそう思った。
まだ日が昇っていないせいで薄暗いが、日が昇りさえすれば目に痛いほどの青空になるだろう。

視線を空から足元に移すと、空の色と対照的な赤い色が目に入る。
朝冷え込むせいか、少し早い紅葉が木々を彩っていた。
一歩踏み出すとサク、と乾いた音が響く。しばしその音を楽しんで、スピアは木の根元に腰を下ろした。

朝の空気は、好きだ。
深く息を吸うと、冷たい空気が肺を通して、体の奥深くまで染み込むのが分かる。
刺さるような棘のある冷たい空気が、好きだった。

「……出発はもう少し後になりそうですね……」

傍らで深い眠りに落ちている緋槻とフールを見やって、小さく独りごちた。
くす、と笑って二人を見比べる。

微動だにしない緋槻とは違って、何事かを呟いて寝返りを打つフールの顔は幼い。
人でいう耳の辺りから羽根が生えていること以外は、殆ど人間である。
これが、神霊を束ねる者なのかと思うと、やはり少し可笑しく感じる。

「……んーぁー……さむい……」

起きているのかいないのか、そう言うフールに苦笑して、スピアはまた空を見上げた。
もう30分も立てば、緋槻が起きるだろう。そう思って。









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