4.


「うわー!!ユリク、芽が出てるよー!!」
「はぁ?目?何が出てるって?」

ユリクの朝は遅い。
上界の「昼」ごろに起きてくるんじゃないかなぁ、と最近思うようになってきた。
多分、ユリクの言う「朝」から大声を出した僕の悪態でもつきながら出てくるんだろう。

「……何、朝から大声で……」

言いながら、大きく欠伸。まだどこか眠そうな頭を横に振って、どこからどう見ても不機嫌な目で僕を見る。

「ほら、ここ。ユリクが食べてた林檎だよ、これ」

僕が指差したのは、ちょっと前にユリクが山積みにした骨みたいな林檎の残骸の山があったところ。
今は、小さな小さな何かが、薄緑色の芽を精一杯土の上に伸ばしている。

「わ、本当だ……こんなぱさぱさの土の上でも芽なんて出るんだ」
「ぱさぱさって……上界よりはマシだよ」
「栄養なんて何にもないのになぁ、偉い偉い」

不機嫌な顔から一転して、いつになく嬉しそうな表情。

「これ、樹になって実がなるといいなぁ、そうしたら毎日林檎が食べれる」
「ちゃんと世話しないとね。……でも僕は育て方なんて知らないんだけど」
「大丈夫。俺が知ってる。あ、……水やらないと。ここは雨降らないからなぁ」

そう言うか言わないかのうちに、彼は盛大な音を立てて家の中へ戻る。戻ったと思ったら、今度は冷えた水の入ったコップを手に持って戻ってくる。
しげしげと薄緑色の芽を眺めて、満足そうに笑ってから、コップから手に移した水をそっとその上に掛けてやっていた。

「……水、冷えてるけど大丈夫かなぁ」

そう、小さく呟きながら。










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