2.
雪が、降っていた。
見渡す限りの白。何処までも何処までも続く白に、一種の嫌悪感のようなものを覚える。
これだけの雪を、水を降らす自然に対しての感嘆は、もう既に何処かへ消え去ってしまっていた。
昨晩から降り始めて、今だ深々と降り続ける雪に、大小二つの足跡があった。
規則正しく残されている跡。所々、小さな足跡が大きくなるのは、恐らくその足跡の持ち主が転んだからだろう。
その二つは迷う事無く、樹までもが凍てついた森の中へと続いていた。
鳥も、獣も、虫さえも寄り付かない、深く寒い、冬の間だけ神に見放された地だった。
転々と、残された足跡。
この時期に森などに足を踏み入れることは、死を意味する。
なのに躊躇いも無く進むそれは、深く深く、森の奥へと続いていた。
殆どの樹は雪と共に葉を落とし、寒々しい姿を晒しているが、ちらほらと見える針葉樹はその葉までもを凍りつかせていた。
枝に積もった雪を重そうに抱えている木々の間から見える空は、鈍色。
厚い雲と雪に閉ざされた世界からは、太陽の姿は拝めなかった。
奥へ、奥へと何かから逃げるように続く足跡。
いくら進んでも、その足跡の先にある物を見ることは出来ない。
僅かな明かりを反射して、目に痛いほどの、白。だからこそ、どんな小さな物でも映えて見える。
そこに迷い無く続く足跡。
果てしなく続く白に、大小二つの跡が、さながら汚れのように。
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