8.
数日後、異質の町の一員となった少年は、その異質の地、生者には見ることの出来ない幻の街中で聞いた。
『此処で、昔派手に内戦があったそうだよ』
『へぇ……だからか、何も無いね、此処は』
『その内戦で、此処の町は全滅したんだって、昔……って言っても10年ほど前だけど』
『結構な数が亡くなっただろうね、夢も家族も全部あっただろうに……』
『浮かばれないだろうな……戦争なんかで不本意に死んだ奴は……』
そう話しながら去っていった旅人を、少年はただぼんやりと眺めながら、町を見回した。
……あるのに。
此処には、全てのものが揃っている。家も店も人も。
自分を迎えてくれる暖かい家がある。自分を必要としてくれる誰かがいる。
異質の少年は、それで十分だった。家族から、故郷から、世界から爪弾きにされてしまった少年は、それでも居場所を探していた。
そして見つけたのは、此処だった。
居場所を見つけたと同時に、少年は全てを理解していた。
死は終わりじゃない。その先には夢がある。生前、何かを強く望んだ者が見ることの出来る、もう一つの人生。
彼が見ていた、何かを探す旅――その七年間は、人の暖かさや温もりを切に願った彼自身の夢だった。
……あまりにも酷く、厳しい、地獄のように生々しい時間だったけれども。
そして夢から覚めた今、彼は手にしたかった物、願っていた何かを手にした。
「僕は此処で良い……此処が良い」
空気を震わすことの無い声で、小さく嵩槻は呟いた。
そして、地を削ることの無い足で駆け出した。
死んでなお、少年――生前、嵩月と呼ばれた――が、捜し求めたものへと。
暖かい家と、自分を必要としてくれる誰かのいる場所に。
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