咽返る様な血の匂い。
ねっとりと纏わりつく紅い雨。
彼は虚ろに目を開いたまま嘲っていた。
「 」
誰が名前を呼ぶ?
誰が自分を呼ぶ?
「 」
何かを呟く女の顔も見ずに少年は剣を振り下ろした。
面白いように血が吹き上がり少年を染める。
顔にかかった血を拭きもせずに少年はただ虚ろな目で空を見た。
紅い。
赤い。
嗚呼、 は何処まで続くのだろう。
咽返る様な血の匂い。
ねっとりと纏わりつく赤い雨。
一歩踏み出すと靴が血を弾く音が響いた。
それは無邪気な子供が水溜りに飛び込む音と似て。
少年の耳に残る。
血の匂い。
確かに があった。
それは生と死の均衡線。
虚ろに笑いながら、一歩、また一歩、と。
空を遮って、少年は歩き出した。
を求めて。
を捨てて。
「所詮」
呟いた言葉は少年の耳に届かないまま悲鳴にかき消されて消えた。
殺せば?という言葉が頭の奥に残る。
そこには確かに があった。
それは生と死の均衡線。